日本の大家さんの外国籍受け入れ拒否問題

日本の大家さんの外国籍受け入れ拒否問題ーーこれは長年にわたって続く日本の不動産賃貸問題の1つだ。なぜ日本の家主の多くは外国籍の賃借人を煙たがるのだろう。第一の壁は言わずと知れた言葉の壁。では言葉の壁がなくなれば、問題は解決するのだろうか。それはなかなか難しい。習慣の壁があるからだ。

 

たとえば、南アジアの外国人が日本で就労する場合は、閉店時間が遅い食品・飲食関係が多い。帰宅すれば夜の10時、11時になってしまう。そこからご飯を作り、一家団欒。子どもも「パパが帰ってきた!」で興奮するだろう。仲間を読んでの集まりもあるだろう。寝静まる近隣(特に高齢者)からすると迷惑千万だ。賃借人の間のトラブルを解決するのも大家からすれば億劫なことだ。

 

かつてあった「家賃とりっぱぐれ問題」もある。今は保証会社が間に入り家賃の回収をしてくれるなど改善が進む一面もあるが、大家の心理としては「外国に逃亡されたら最後」という恐怖感がある。

 

一方で近年は中国系の不動産投資が進み、中国人オーナーが外国人に賃貸しているケースが見られる。行ってみれば都心部では「今や大家さんは中国人」なのだ。しかし、大家が中国人の場合、借家人はかなりのリスクを負わされるケースもあるる。

 

中国籍の投資家がマンション一棟を所有すると、自分にとって“理想の収益物件”にしようとあれこれ算段を始める。低い賃料を思い切り引き上げたり、あるいは従来の賃借人を立ち退かせ、民泊にしたりするというケースもある。そのときの立ち退かせ方はかなり横暴だ。板橋区の物件では「意図的にエレベーター止める」といった暴挙があった。中野区の不動産業者からは「カギを変えてしまう」(これは未然に防いだらしいが)といったケースも報告されている。

 

中国人オーナーが増えることによる、居住者への不利益はいよいよ現実のものとなってきた。問題は、中国人オーナーが「日本の居住者は借地借家法に守られている」ことをあまりよく知らないということだ。

 

換言すれば、中国ではそのような横暴な行為が日常茶飯的に繰り返されてきていた。筆者がかつて滞在していた上海でも「ある日突然出ていけと言われた」と泣きを見る借家人が多かった。中国人が「自分名義の住まいを持ちたい」と思うのはこのあたりにも原因がある。

 

日本では他にも、重要事項の説明をすっ飛ばして契約行為をしたり、仲間の間で勝手に転貸がなされたり、といったこともあるという。この分では、本来ならば賃借人に加入してもらう火災保険も、このような“いい加減さ”が常態化すれば「入っていなかった」になりかねない。万が一火災でも起これば一巻の終わりだ。

 

「ルール」が異なる中国資本に対しては警戒すべきだろうが、不動産業界を挙げての対策、国を挙げての規制というのも残念ながら後手に回っている。今年2月に筆者は不動産流通推進センターのスクーリングに参加したが、こうした問題点はまったく共有されなかった。

 

日本でビジネスチャンスを虎視眈々と狙う中国資本の不動産会社、一部には健全な運営を志す業者もあるがだろうが、いい加減な業者もある。日本の制度のグレーゾーンを利用して、好き放題にやる業者もある。このような業者が、日本人の大家が遠ざけてきた外国人客を取り込んだら、「脱法空間」はさらに増すばかりだ。

 

 

互いに不利益を被らないような新たな制度を創設し、大家が安心して外国人に賃貸することができるようなしくみづくりと情報共有が、焦眉の課題となっている。(姫田小夏)