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マレーシアで無許可の外国人労働者への取り締まり強化  日系資本にも深刻な影響が

726日に予定していたマレーシア在住の日本人から突然、登壇キャンセルの連絡が入った。LINEに打たれた短い文章によると、今マレーシアでは外国人労働者に対する取り締まりが強まっているということで、「アジアビズ・オンラインで予定している対談内容の半分も話せなくなってしまった」というものだった。

 

調べてみると、確かに5月以降、マレーシア政府は当局の許可なしに就労しているミャンマー人を含む外国人労働者を対象に取り締まりを開始、予告なく強制捜査を実施し、逮捕者が続出しているという。(「The Nation25626日)

 

背景には2024930日にマレーシアのスティーブン・シム人材開発大臣が国会で行った「2024930日時点でマレーシアにおける外国人労働者の数が2470781人である」との報告があるようだ。(現地メディア「malaymail」)

 

ここでシム大臣は、外国人労働者が国全体の労働力の15%を超えないようにするという政府の方針を強調したのである。

 

同メディアによれば、すでに政府は2023318日から新規の外国人労働者に対する承認を凍結しているという。さらに同省は、マレーシア人の熟練労働者を育成し、産業を労働集約型から高付加価値型へ移行させるため、技術・職業教育訓練(TVET)プログラムの推進も図っているという。外国人労働者に占められている低賃金職種にマレーシア人を呼び込むため、最低賃金の見直しも行う予定であるとも付け加えている。

 

不法就労する外国人労働者に対する取り締まりは、以前は罰金徴収が主だったが、現在は「工場や飲食店への突入」といった強硬姿勢にシフトしているようだ。20241月以降、外国人労働者の雇用主がターゲットとなり、同年8月の時点で900人の雇用主が摘発・起訴された。(「malaymail」)

 

ASEAN Briefing」によると、現在マレーシアでは外国人労働者の上限は250万人に設定され、割り当ては次のように分配されているという。

 

  • 製造業:40%
  • 構造:30%
  • サービス:15%
  • プランテーション:10%
  • 農業:5%

 

もとより、マレー系住民の保護政策が強いマレーシアだったが、ここにきて国境を越えてやってくる外国人労働者との摩擦も強まっていたようだ。

 

 

登壇予定者のコメントには「誰かが当局に垂れ込んだのか、私の知り合いの店も、閉店に追い込まれてしまいました」とあった。マレーシアで外国人労働者を頼って経営を維持してきた日系資本にも、深刻な影響が及んでいる。(姫田小夏)